「学校法人日本医科大学広報」寄稿

第42回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会で最優秀賞を受賞

日本医科大学付属病院 再生医療科 部長 
日本医科大学大学院器官機能病態内科学 准教授 宮本 正章

 平成19年11月2日(金),3日(土)横浜市で開催されました 第42回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会において発表致しました特別研究報告「治療抵抗性末梢動脈疾患に対する先進併用療法:マゴットセラピー,高気圧酸素療法,自己骨髄幹細胞による血管新生療法を併用した新治療法」が最優秀賞を受賞致しました.私たちは,現行の治療法では治癒しない(治療抵抗性)末梢動脈疾患(PeripheralArterial Disease : PAD)の治療に取り組んでおり,新手法を取り入れ良好な成績を収めています.糖尿病,ASO,バージャー病,全身性強皮症(PSS)等膠原病による難治性壊疽・潰瘍症例で,前医より患肢大切断か治療法がないと診断された症例では,虚血症状に加え,すでに多剤耐性菌による感染が成立しており,1)感染制御,2)創傷治癒促進,3)血流増加の3点を同時に治療せねば,エンドポイントである疼痛を除去し自立歩行による退院を達成する事は不可能です.そのため私たちは,この3点を同時に治療するためマゴットセラピー(医療用無菌ウジ治療),高気圧酸素療法(Hyperbaric Oxygen Therapy : HBO), 自己骨髄幹細胞筋肉内投与による血管新生療法(先進医療承認,都内では昭和大学附属病院と当院のみ)を組み合わせた先進併用療法を開発致しました.この結果,現在前医で患肢大切断と診断された症例或いはもう治療法がないと診断された治療抵抗性症例58例を治療し(下肢症例のみ),50例の86.2%に有効性を認め(8例は患肢大切断施行),疼痛を除去して,自立歩行で退院するという結果を得ております.これは,HBOに関して,現在都内で大型装置である第2種高気圧酸素治療装置は,本院と東京医科歯科大学附属病院,都立荏原病院の3施設しか稼動しておらず,高気圧酸素治療部松田範子臨床工学技師,秋丸琥甫部長,武蔵小杉病院消化器病センター長徳永 昭教授の御協力・御指導の賜物であります.さらに循環器・肝臓・一般内科・再生医療科の先生方だけでなく当院はじめ他大学も含めた多くの先生方,パラメディカル,事務職員の方々の御協力,御支援に対しまして,心より感謝申し上げます. また,平成19年10月25日(木)東京ビックサイトで開催されました第10回産業交流展において,日本医科大学発のバイオベンチャー企業として創業致しましたマゴットセラピーシステムを販売する会社「株式会社バイオセラピーメディカル」が最高賞の大賞を受賞し,石原慎太郎東京都知事より直接賞状,大賞盾,賞金300万円を授与して頂きました.さらに平成19年6月22日には,経済産業省より中小企業新事業活動促進法による「異分野連携新事業分野開拓」計画認定案件に認定されております(採択率約2%).この場をお借り致しまして心より御礼申し上げます.なお,徳永 昭教授は平成21年第44回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会会長に決定しておられ,今後,当大学での高気圧酸素療法の益々の発展が期待されます.