ステップ1:壊死組織の除去
(Wound Debridement) |
幼虫(マゴット)はまず蛋白融解酵素を分泌し壊死組織を溶かし、次にそれを再び吸い上げることで創面の壊死組織を除去します。 この蛋白融解酵素は健全な組織を融解することはないので、壊死組織だけが選択的に取り除かれることになります。幼虫には歯がありませんが体に細かなトゲを持っており、
創面を這い回ると同時に組織に小さな穴を開け分泌酵素の組織内への浸透を容易にしています。 |
ステップ2:殺菌
(Antimicrobial Action)
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幼虫の分泌液の中には様々な抗菌作用を示す物質が含まれており、この物質がMRSAなどの薬剤耐性菌を含む様々な病原菌に対する殺菌作用を持つことが報告されています。その詳細はまだ解明されていませんが、これまでにLucifensinなどの抗菌ペプチドが同定されています。更に幼虫はこのような抗菌物質を創面へ分泌するだけではなく、様々な病原菌を含んだ壊死組織融解液を吸い上げ自身の消化管内でも殺菌を行うことも知られています。
また、幼虫が出す分泌液が病原菌により形成されるバイオフィルムを融解する作用を持つことも近年報告されています。 |
ステップ3:肉芽組織増生の促進
(Promotion of Wound Healing)
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マゴットセラピーを行った創面は壊死組織が取り除かれ殺菌されるだけではなく、その表面に上皮化の土台となる肉芽組織が非常に速く増生してくることが報告されています。以前は創面を動き回る幼虫の機械的刺激により肉芽組織の増生が促進されると考えられていましたが、最近の研究により幼虫の分泌液が持つ線維芽細胞刺激作用や血管新生作用により組織の再生が促進されていることが解明されてきました。 |