マゴットセラピーに関する主要な文献に対する簡単なレビューです。文献執筆や学会報告の際にお役立て下さい。
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2007 | Netherlands | Maggot debridement therapy of infected ulcers: patients and wound factors influencing outcome - a study on 101 patients and 117 wounds | ||||||
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サマリー日本語訳 | |||||||
<序文>マゴット療法は何世紀にもわたって壊死組織を取り除く有効な方法として知られている。2004年1月には米国FDAがマゴット療法を管理することを決めた。一方でどのような創が本療法に適し、どのような創が適さないのかが依然として不明確であることから、治療結果に影響を及ぼす患者や局所の因子を探るために前向きのスタディーを行った。<対象と方法>2002年8月から2005年12月の間に、壊死組織や壊疽を伴う感染創を有し、マゴット療法の適応だと思われる患者が本スタディーにエントリーされた。<結果>全対象の内、72人(71%)がASAVまたはWに分類され、116創の内78創(67%)において改善が認められた。内訳は完全治癒60創、ほぼ治癒12創、デブリまでは完了6創である。この成績はこれまで文献に報告されているものとほぼ同じとなった。外傷が原因となった24症例は全例が完全に治癒した。一方で感染性関節炎を伴っていた創13例は全例が失敗に終わり、その内半数が大切断に至った。多変量解析の結果、慢性下肢虚血、創の深さ、高年齢(60歳以上)が治療成績に影響するネガティブ因子として挙げられた。性別、肥満、糖尿病、喫煙、ASA分類、創の存在部位、創のサイズ、罹患期間は治療成績に影響を与えていなかった。<結論>いくつかの患者背景(性別、喫煙の有無、糖尿病の有無、ASA分類)と創の背景(存在部位、罹患期間、サイズ)は、特にマゴット療法を行うにあたって禁忌とはならないようであった。一方で患者が高年齢である場合や慢性下肢虚血を合併している場合、創が深い場合などは治療効果が得られにくい傾向が見られた。感染性関節炎はマゴット療法の適応とはならないと考えられる。 |
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訳者レビュー | ||||||||
ケースシリーズ研究の中では最も規模が大きなもので、治療成績に影響を与える因子をあぶりだしている。 |
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2007 | Netherlands | The results of maggot debridement therapy in the ischemic legs: a study on 89 patients with 89 wounds on the lower leg treated with maggots | ||||||
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サマリー日本語訳 | |||||||
マゴット療法は効果的なデブリ法であるが、虚血を有する患者での治療成績は悪く、虚血を伴う潰瘍にはマゴット療法は行わないという方針のクリニックもある。しかしその場合残された道は下肢切断だけという場合もある。このスタディーでは血流障害を持つ症例はそうでない症例に比べて有意にマゴット療法の結果が悪い傾向にあった。しかしながら血流障害を有する症例でもその52%において良い結果が得られた。内訳は血行再建により血流が改善した症例で68%、血行再建を行っていない症例で41%である。マゴット療法の成績は虚血肢においてより悪くはなるが、だからといって虚血を有する症例が本療法の適応にならないという訳ではない。 |
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訳者レビュー | ||||||||
2007年もう一つのスタディーとほぼ同じ著者による、末梢循環に焦点を当てた分析。試験期間も重なっているためにおそらく対象患者もかなり重なっていると推測される。 |
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2003 | Sweden | Larval therapy - an effective method of ulcer debridement | ||||||
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サマリー日本語訳 | |||||||
古来よりマゴット療法は創傷治癒を助けるものとして知られていた。近年その効果が見直され始めてきており、臨床の場だけでなく基礎研究の場においても大きな注目を浴びている。今回我々は74名の成因の異なる黒色壊死または黄色壊死組を伴う慢性潰瘍に対するマゴット療法の効果をオープン試験にて検証した。結果、86%にて有効なデブリ効果が得られ、その3分の2の患者において1回の治療で効果が得られた。デブリ効果が得られなかった症例ではマゴットが死滅していた。潰瘍の種類による治療効果の差は認められなかったが、糖尿病患者29名に対しては全例特筆すべき効果が得られた。成因の異なる31例の潰瘍において悪臭が認められていたが、その内58%においてその悪臭を減少させる効果があった。問題となるような副作用は認められなかった。対象患者の4分の1が治療中の疼痛減少を実感したが、一方で41%は特に違いを感じず、34%の患者は疼痛の増強を認めた。しかし多くの患者は主・客観的に患部のデブリードマンが進んでいたため、治療の継続を希望した。この臨床試験を通じてマゴット療法は、簡便で患者にも受け入れられ易い潰瘍デブリードマンの方法であることが実証された。 |
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訳者レビュー | ||||||||
74名のケースシリーズ研究で、86%の症例において有効なデブリ効果が得られたことが報告されている。一方で「潰瘍の成因とデブリ効果の間には特別な関連を見い出すことができなかった」と記述があり、また患者背景や効果判定基準、アウトカムの詳細が記載されていないため、肝心の治療効果に影響を与える患者/局所因子についてあまり有用な情報はこの報告からは得ることができない。 |
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1999 | Israel | Maggot therapy for the treatment of intractable wounds | ||||||
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サマリー日本語訳 | |||||||
<背景>ハエの幼虫がデブリ効果を持ち創傷治癒を促進することは何世紀も前から知られていた。米国では1931年にマゴット療法が始まり、1940年代半ばまでに300以上の医療機関にて日常的に使用されるようになった。その後抗生物質の登場によってその利用は稀になったが、1990年代の始めに米国、英国、イスラエルにて再び実施されるようになった。この臨床試験ではイスラエルにおいて難治性の慢性創傷/潰瘍において長期入院を余儀なくされている症例に対するマゴット療法の効果を検証する。<方法>慢性下肢潰瘍または仙骨部褥瘡に苦しむ患者25名に対してヒロズキンバエの幼虫を用いたマゴット療法がオープン試験にて試された。マゴット療法を行う前の罹患機関は1-90ヵ月。35創は足またはふくらはぎ、1創は第1指に存在し、褥瘡は腰背部に位置していた。無菌処理された50〜1000匹のマゴットが1回に1〜2日、週に2〜5回のペースで患部に置かれた。入院患者はイスラエルのハダサ病院の5つの病棟、2つの老年病院または1つのクリニック外来にて治療を受けた。創の成因は静脈うっ滞12名、対麻痺5名、片麻痺2名、バージャー病1名、リンパうっ滞1名、基底細胞癌1名であった。患部は完全にデブリが完了されるまで毎日または1日おきに評価された。<結果>デブリードマンは38創(88.4%)で完全に完了、3創(7%)で有意、1創(2.3%)で部分的な効果、1創(2.3%)で効果なしとなった。5人の患者は下肢切断の適応と診断されていたが、マゴット療法施行において救肢が可能となった。<結論>マゴット療法は比較的早く、効果的なデブリードマンが可能な治療である。特に従来の治療や保存的外科デブリードマンが効果を示さない壊死組織を伴うサイズの大きな創において有用性があると考えられる。 |
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訳者レビュー | ||||||||
28名43創に対して行われたケースシリーズ研究で、完全なデブリ完了と有効なデブリが認められた症例を合わせると95.4%と優れた結果が得られている。 |